政府も海保も、あるいは自衛隊も・・・? 日本に国を守れる健全な組織など果たして存在するのか?
※この記事は文字数からして約4900文字(原稿用紙約12枚分)の長文であり、いくつかに分けて読まれたほうがよいかもしれません。
某国によるとみなしていい、一連のサンゴ密漁問題に関して次のような報道がなされたことによって一安心した方々も多いでしょう。
この記事では、海上保安庁の幹部によるコメントが載せられています。
海保幹部は「外交ルートでの申し入れや罰金などの引き上げに加え、領海内での逮捕が駄目押しになり、今回の成果につながった」と分析した
サンゴ密漁船をゼロにしたことはたしかに成果とも呼べるでしょうが、何かことさらに自らがやったことを強調しているようにも見えなくありません。まるで、大多数の政治家やそれにおもねる(常識の無い)官僚のように・・・。実際問題、もしこれが海上保安庁全体の総意として発信されたというなら、肝心なことを忘却していますし、これで丸く収まると考えるなど、浅はか過ぎます。こういった懸念については、Twitter上でもいくつか見受けられたので、紹介しておきます。
<サンゴ密漁>210隻超えた中国漁船…27日1隻もなし http://t.co/tr1i0xKqlD まったくこの海保の幹部ものんびりしてるな。あらかた取り尽くしたからじゃないんかい(-_-#)
— 高部正樹 (@takabemasaki) 2014, 11月 27
<サンゴ密漁>210隻超えた中国漁船が27日はゼロー毎日新聞 http://t.co/Q9n3rWsKdd☆ノー天気な報道だ!密漁には軍船並の重装備船が拿捕されておりレーダーや本国との情報連係で統制した組織(国家?)犯罪と見るべき!自衛隊の動きを探索かも?漁船は既に日本海に集結!
— 真実一路(S. Notomi) (@notomi0700) 2014, 11月 27
海保の人が小笠原は長引かない、問題は尖閣だって言ってた。人員が足りないって、ちゃんと船に乗れるまで最低でも教育に3年はかかるからと・・・。><サンゴ密漁>210隻超えた中国漁船…27日1隻もなし(毎日新聞) - Y!ニュース http://t.co/F0IgwJPvvb
— めぐみ (@Gil_Lud) 2014, 11月 27
一番上のツイートが簡潔に指摘していますが、過去記事でも触れたように、地元漁師が涙する小笠原海底の白い砂漠から日本の現状を考える - ふぁるてぃ~の隠れ家、あらかたサンゴを収奪し終えたから一時的に撤退したと見るのが正しく、1隻もいなくなったことを強調するのは、後の祭りというものです。日本政府や(世界のコースト・ガードと違って文民警察である)海上保安庁の大手柄と解釈しては甚だ危険です。
ここで一応わたしの見解を述べておくと、決して海上保安庁に良心などおらず全て役立たずだ、と言うつもりは毛頭無く、海上保安庁という1組織である以上、いくら現場が良心的で奮戦しているといっても、トップや幹部が腐りきっていたり、見当違いな見方をしていては、前線にいる方々がいざというとき上層部の無能故にとばっちりをくらうことを何よりも懸念しているのです。
では、海保の上層部は現実問題どうなのかというと、ガッカリといわざるをえないようです。このツイートを見て初めて知ったのですが、一連のサンゴ密漁を中共がしたたかに行っている邪悪な軍拡とは別問題であると、切り離して対処に当たっていることが伺えます。
+“現場上がり”トップのこの認識は、“からごころ”では? 「佐藤雄二海上保安庁長官は「サンゴは1キロ600万円の高値で、一獲千金を狙って来たのではないか」と述べ、海洋権益拡張を狙う中国政府の動きとの関連性はないとの見方を示した。」 http://t.co/SSLCZatXWl
— 中川八洋botプラス (@yatsuhiro_bot) 2014, 11月 12
からごころとは、漢心とも表記するとおり、「中国的なものの考え方。中国の文化に心酔し、それに感化された思想を持つことを、江戸時代の国学者が批判的にいった語」を指しますが、なるほどと思いました。こちらは対外的には軍隊とされている自衛隊もそうなのですが、中共によって我が国の国防に関わる主要ポストがことごとく1本釣りされていると考えれば、咀嚼するのは難しくありません。
自衛隊の上層部を育成しているのは、周知の通り防衛大学校ですがその育成機関の歴代校長についてはどうでしょう。ネット上で誰でも調べることが出来ますが、かろうじて軍人といえるのは、かなり前の60年代頃の2代目校長、大森寛氏(陸上幕僚長出身)だけです。つまり、日本の防衛大学校は世界的なレベルの士官学校ではなく、あろうことか文民が就き続けたのです。しかも悪いことに単なる文民なら戦後日本の流れからして止むをえないともいえるのですが、ことごとく怪しい思想を持っていたり、安全保障上の懸念を抱える国々と密接な関係を持つ非常に不適格な人物が多くいるのです。
この人選の問題については、オークラ出版の『撃論』第7号にて、中川八洋・筑波大学名誉教授が「“中共の工作員”国分良成氏で、赤化する防衛大学校の深刻」の表4で指摘されています。
これを見ると分かるように、比較的近年の歴代校長は、長年に渡って特定の政治団体からの影響を強く受けていたことが理解できます。わざわざ名前を挙げるまでもなく、それらが国防否定の歪んだ思想を強く持っていることは言うまでもありません。ちなみに、中川氏のこの論文は同盟国であるアメリカの士官学校をも取り上げていて、士官学校とはどうあるべきか、という重要な点についても考察されているので、安全保障を真剣に考えたい方にとっては必読と言える内容です。
はなしは戻って、形式上漁民による地元民からすれば危険極まりない騒動がこれで終結するとは限らないと断定できるのは、次の報道から容易に伺えます。
中国当局は摘発姿勢を強調するが、どこまで真剣に取り組んでいるのか実態は不透明だ
関係者によると、密漁船は船名を消したり、偽装したりすることが一般的だ。漁船の位置情報を自動的に送る装置も意図的に外されている。中国は海岸線が長く、無人島も多い。ひそかに隠れている可能性もある
そもそも本当に一連の騒動で登場する漁民が純粋に利己目的からの一般人で、他のどこからも支援を受けてないとは言えないのではないかという疑念については、小笠原諸島沖のサンゴ密漁船は実態からして軍用船舶とみなせるのではなかろうか? - ふぁるてぃ~の隠れ家でも指摘しましたが、そういう仮定で考えるとまるでアニメのようなのです。海保に身柄を拘束されたサンゴ密漁船には、日本製の高級・高性能なレーダーが装備されていたのですが、さぞかし中共の漁民は裕福なのでしょう(笑) お仲間と連携するためだけに、しかも捕縛される危険を冒してまで現場海域に持っていける大胆さにはかないっこありません。普通なら現物であれ、購入に必要な現金であれ、どこからか支援されていると考えるのが妥当でしょう。そうならば、日本の警察機関に捕縛され、最終的に高価な代物が返還されなかったとしても、別段困ることはないでしょうから。実際、今現在隠れている拠点も本当は政府機関・軍関係なくどこかの大きな組織から捻出されて作られたものかもしれません。そうなると、今放映中の『ガンダム Gのレコンギスタ』そのものでアニメのほうから学べることが多い世の中になってしまっているともいえますね。
モノもそうですが、では人間(漁民)はどうなのか。この点について考察するには中国共産党の国防戦略について知っておく必要があります。ネット上で無料で読める文献はほかにもあるかもしれませんが、下記の記事が秀逸です。
この記事では4ページから、漁民を「海上民兵」に組織化、という項で、中国共産党が漁民を民兵として国防戦略に位置づけていることが理解できます。
その他の公式報道でも、海上権益維持のため、海上民兵整備の強化が行われていることが確認できる。すなわち、中国人民解放軍の指揮、統制下において、漁民を「海上民兵」として急速に育成していることが明らかになったわけである
実際、この5月初旬から7月半ばにかけてパラセル諸島近くに設置された「中国海洋石油981」の大型掘削装置を守るために、中国は一時、90隻を超える海上民兵漁船を派遣したと言われている。中には、漁民に偽装した軍人もいたとされている。
こうなると、もはやこれらの中国の漁民たちは、民間人ではなく、軍の行動に編入された立派な兵士と言わざるを得ないだろう。
さらにやっかいなことに、これらの漁民は、本当の軍人のように正式な訓練を長期間にわたって受けているわけではないのだ。彼らは決して小銃などの扱いに長けているわけではない。おまけにひどく若い漁民ばかりが現場に派遣されているようだ。
こうなると、一旦、南シナ海の紛争にこのような海上民兵が投入されれば、事態がエスカレートし、衝突が激しくなることはほぼ確実であろう
2番目の引用の舞台は、南シナ海のパラセル諸島ですが、今後の展開によっては、日本の尖閣諸島も似たような状況に陥る可能性もあります。現時点(2014年)では、たしかに人民解放軍は軍拡を行っているものの、日米両国を相手にしての戦争遂行能力はゼロに近いといえるでしょう。ですが、それは発展途上の2014年だからいえるはなしで、どうも2020年あたりからはキナ臭くなる模様です。ですから、現時点では中国共産党の考えとしては、本格的な軍事行動はひとまず自制しておき、実際の行動としても統率のとれる人間を小笠原諸島など現場海域に選抜して送っているだけかもしれません。海保に捕縛された人間が本当に共産党や人民解放軍と公式にも非公式にも何らかの支援を受けていないとは簡単には断定できないものですし、正式な軍人か民兵かは置いとくとして、指示に従える人間だから捕縛されたとしても危険な反撃に打って出ないのではないでしょうか。そういう関連する他の事例から考察するに、これからも日本国は後手後手に回り取り返しのつかない事態に陥る可能性は残念ながら大といえます。
サンゴ密漁が一区切りついても上記に述べた複数の問題が一瞬にしてパーと立ち消えることはありません。同じ『撃論』第7号になりますが、武貞秀士・韓国延世大学教授が、「尖閣諸島を自力防衛するための、自衛隊の戦力整備計画五ヶ条」にて、基幹民兵数は2012年時点で800万人としています。中共の圧倒的な人海戦術と将来的な軍拡の前に我が国はいったいどうなるのでしょうか・・・。